◆ 「河」(かわ)は、俳誌。1958年12月、東京都にて角川源義が創刊・主宰。源義は創刊にあたり、伝統への回帰と叙情性の回復を標榜。定型と写実を重視しつつ、結社を超えた志向のもと個性的な作風を展開する。1975年10月の源義の没後、進藤一考、角川照子の主宰を経て2004年6月より角川春樹が主宰。

 

主宰(括弧内は主宰期間。)

     • 角川源義(1958年 - 1975年)

     • 進藤一考(1975年 - 1979年)

     • 角川照子(1979年 - 2004年)

     • 角川春樹(2004年 - )

 

◆ 角川 源義(かどかわ げんよし、1917年(大正6年)- 1975年(昭和50年))は、日本の実業家、国文学者、俳人。角川書店(現・KADOKAWA)の創立者。俳号は源義(げんぎ)、水羊(すいよう)。 角川書店設立後、1947年に金尾梅の門の「古志」(のち「季節」に改題)に幹部同人として参加。1958年12月、叙情性の回復と伝統への回帰を標榜し「河」を創刊、死去するまで主宰を務めた[6]。1975年、第5句集『西行の日』で読売文学賞を受賞。 代表句として、「何求(と)めて冬帽行くや切通し」(『ロダンの首』所収)「篁(たかむら)に一水まぎる秋燕」(『秋燕』所収)「花あれば西行の日と思ふべし」(『西行の日』所収)などがある。飯田蛇笏の格調の高い句風を慕い、また石田波郷の俳句精神に傾倒。自身の句も二句一章の構造を持つ格調の高い句が多く、客観・写実に徹すれば叙情がにじみ出るという考えに立っていた。 中世への民俗学的関心や古典への傾倒などから難解な句を作る傾向があったが、第4句集『冬の虹』(1972年)からは日々の生活に目を向け、「軽み」に通じる平明で直接的な叙情を目指した。「篁に」の句にちなみ、源義の忌日は「秋燕忌」(しゅうえんき)とも呼ばれる。

【句集】

  • ロダンの首(近藤書店、1956年)

  • 秋燕(狼玕堂、1966年)

  • 神々の饗宴(牧羊社、1969年)

  • 冬の虹(東京美術、1972年)

  • 西行の日(牧羊社、1975年)

 

◆ 進藤 一考(しんどう いっこう、1929年 - 1999年)は、神奈川県出身の俳人。本名・一孝(かずたか)。 横須賀市生まれ、1944年頃より句作。伊豆三郷の指導を受ける。1958年、角川源義主宰の「河」創刊に同人参加、 源義に師事。1976年、源義没後「河」主宰に就任。1979年、「河」主宰を辞し「人」を創刊・主宰。叙情俳句を 基底に「俳句情念論」を唱えた。句集に『斧のごとく』『白昼』『深紅の椅子』など

 

◆ 角川 照子(かどかわ てるこ、1928年 - 2004年)は、東京府渋谷町(現東京都渋谷区)出身の俳人。 1949年、角川源義と結婚する。1979年、源義創刊の「河」主宰に就任。1987年、『花行脚』により第11回現代俳句 女流賞を受賞した。代表句に「さいはての句碑に掛け置く春ショール」などがあり、格調と叙情を兼ね備えた句風 である。句集に『幻戯微笑』『阿呍』『秋燕忌』などがある。2004年8月9日、荻窪の自宅にて死去した。75歳。 「河」主宰は角川春樹が継いだ。

 

◆ 角川春樹(かどかわ はるき、1942年- )1979年、生前に父・源義が創刊・主宰し、源義没後は継母の角川照子 が主宰を引き継いでいた俳誌「河」の副主宰に就任。選者の立場になったことから急激に俳句への傾斜を深め、 以後旺盛に俳句に関わる。1981年に第一句集『カエサルの地』出版、翌年に第二句集『信長の首』を出版。中上健次 は『信長の首』について、従来の俳句の「四畳半的な、せまい世界」をぶち壊したと評し、散文家としてショックを 受けたと語る。晩年の山本健吉からも激賞を受け、その登場は俳壇的事件として捉えられた。1986年に俳句総合誌 『俳句研究』を買収したことも話題となる。第二句集『信長の首』は1982年芸術選奨文部大臣賞および第6回俳人協会 新人賞を受賞。以降も多数の句集を出しており、1983年『流され王』で第35回読売文学賞、1990年『花咲爺』で第24回 蛇笏賞、2005年『海鼠の日』で第5回山本健吉文学賞、同年『JAPAN』で第8回加藤郁乎賞、2007年『角川家の戦後』 で第7回山本健吉文学賞を受賞している。 2006年「河」主宰に就任。俳句にはリズム感と映像の復元力、自己投影が必要とする。代表句は「黒き蝶ゴッホの耳を殺(そ)ぎに来る」(『カエサルの地』)、「向日葵や信長の首斬り落とす」(『信長の首』)、「流されてたましひ鳥となり帰る」(『流され王』)、「存在と時間とジンと晩夏光」(『存在と時間』)など。特に第三句集『流され王』以降で民俗的伝統への傾倒を示し、あらぶる神々への共感が句の特色となる。「河」主宰就任時より、「盆栽俳句」にまみれた既成俳壇から訣別するとして「魂の一行詩」を標榜。2011年には東日本大震災を受けた震災句集『白い戦場』を出版した。

【句集】

 • 句集『カエサルの地』牧羊社 河叢書 1981

 • 句集『信長の首』牧羊社 河叢書 1982

 • 句集『流され王』牧羊社 河叢書 1983

 • 『補陀落の径 角川春樹句集』深夜叢書社 河叢書 1984

 • 『角川春樹集・猿田彦』俳句の現在 三一書房 1985

 • 『試写室の椅子』角川書店 1985

 • 『「いのち」の思想』富士見書房 1986

 • 『一つ目小僧 句集』富士見書房 1987

 • 『花時雨 自選三四九句 句集』富士見書房 1988

 • 『夢殿 句集』富士見書房 1988

 • 『花咲爺 句集』富士見書房 1989

 • 『関東平野 句集』角川書店 1992

 • 『月の船 句集』角川書店 1992

 • 『檻 句集』朝日新聞社 1995 のちハルキ文庫

 • 『存在と時間 句集』河出書房新社 1997

 • 句集『いのちの緒』角川春樹事務所 2000

 • 句集『角川春樹獄中俳句 海鼠の日(なまこのひ)』

   文學の森 2004

 • 『Japan 句集』文學の森 2005

 • 『魂の一行詩』文學の森 2006

 • 『飢餓海峡』思潮社 2007

 • 『叛逆の十七文字 魂の一行詩』思潮社 2007

 • 『晩夏のカクテル 魂の一行詩』日本一行詩協会

    日本一行詩叢書 2007

 • 『荒地 魂の一行詩』日本一行詩協会 日本一行詩叢書 2008

 • 『男たちのブルース』思潮社 2008

 • 『漂泊の十七文字 魂の一行詩』思潮社 2008

 • 『白い戦場 震災句集』文學の森 2011

 • 『白鳥忌 一行詩集』文學の森 2011